第227号 親子三代 花嗜好

実家の小さな庭に、今年も「おばあちゃんの花」が咲きました。

ホームセンターの片隅で、枯れて今にも処分されそうだったその花を、祖母が買って庭に植えてから、今年で約30年経ちます。
祖母はずっと前に亡くなりましたが、その花は立派に成長し、今でも毎年可愛い花を咲かせてくれます。

「お店に綺麗な花がたくさんあるのに、おばあちゃんが枯れそうな花を持ってきて、これを買いたいっていうからびっくりしたわ。しかも980円!」と母は時々思い出話をするのですが、それは笑い話でもあり、優しい祖母が瀕死の植物を救った自慢話でもあり、聞いている私も毎度心が和むエピソードです。

そういう母の花嗜好もなかなかのもので、先日は庭に咲いているツユクサに支柱を添えていました。鮮やかな青色の花は確かに美しいけれど、ツユクサはいわゆる「雑草」として処分されてしまう植物。それを、まるで高貴な花のように愛でる感性たるや。私は立派な支柱と素朴なツユクサのコントラストに衝撃を受け、思わず二度見をしたのでした。

見過ごしてしまう植物の美しさを知っている二人。
祖母も母も、栃木県の自然豊かな地で育ち(私自身は栃木産まれ、埼玉育ち)、私よりもずっと植物を身近な存在として生きてきたからこそ、見える景色が違うのではないかと思います。

花市場には一点のシミもない美しい花々や、品種改良を重ねて作り出された芸術品のような花が並びます。私は市場に行くたびにそれらを見て感動し、花の仕事をしている喜びを感じています。

そしてまた一方で祖母と母に、身近な植物の素朴な美しさも思い出させてもらっています。

以前は雑草として道端でよく見かけたススキも最近はあまり見かけなくなりました。
馴染み深いススキですが良く見ると、フワフワの穂も細長い葉も、なかなかグラフィカルで美しい植物です。

今月29日は中秋の名月。
ススキをお供えして、お月見を楽しもうと思います。

(2023.9.27 こまつ)

おばあちゃんの花は白丁花(ハクチョウゲ)