第112号 梅の実の行方

私の実家は住宅街の角地で、そのまさに角の部分に1本の梅の木が立っています。
花の季節になれば家族やご近所の皆さんが花を見上げて目を細め、実のなる季節になれば、今年はかなり豊作ではないか、いやいや去年の方がもっと多かったと、木の下で論議を交わし、ちょっとした交流の場になることも。

今年の梅酒。一番右はご近所で頂いた杏で作った杏酒です。

今年の梅酒。一番右はご近所で頂いた杏で作った杏酒です。

先日ふらりと帰ったら、母が外で梅酒の瓶を抱え、ご近所の皆さんと一緒に梅の実をかじりながら木を見上げて話しこんでいました。お酒を含んだ実なので、ほんのり頬を赤くしている方もいて、ほのぼのとした何とも良い雰囲気。実のなる木は、たくさんの恵みを与えてくれる魅力的な存在であることを目の当たりにしました。

昨年、その母ご自慢の梅の実を沢山分けてもらって、我が家でも梅酒を作りました。少しずつ琥珀色に変わっていく様はとても綺麗で、完成までまだかまだかと待ち望む期間もまた楽しみのひとつ。それだけ心待ちにして飲んだ梅酒の味といったら!
梅の爽やかな酸味とフルーティーな香りは、市販の梅酒では味わえない特別なものでした。

父の日の贈り物としてお作りした、ひまわりのアレンジ。

父の日の贈り物としてお作りした、ひまわりのアレンジ。

そして、ひとしきり飲み終えた後、瓶の底にはたくさんの梅の実が…。美味しいエキスをお酒に与えてくれた梅はもうお役は終わったのだと、やや躊躇しつつも全て廃棄してしまいました。

何の気なしにそれを母に伝えたところ、みるみるうちに怒りと落胆が入り混じったような顔になり、「なんてもったいないことをしたのだ」と、それから1年経った今でも叱られています。良く調べたら、ジャムやゼリーにして十分楽しむことができるのですね。自然の恵みを、きちんと考えもせずに捨ててしまった事を猛省しています。

芍薬にファーやスエードをあわせたアレンジ。三郷の花教室で。

芍薬にファーやスエードをあわせたアレンジ。三郷の花教室で。

そんな私たちのやり取りを黙って聞いていた父が一言「今年も捨てたら一生叱られ続けるぞ」と。
誓います。残った梅の実を、今後はもう絶対に捨てません。

(2013.6.24 こまつ)