地震直後、ガソリンの不足により一部の仕事をお休みさせて頂きました。普段当たり前のように手に入るものが突然無くなると、当然のことながら、人はパニックに陥り大きなストレスを感じます。今までの人生で、資源や食糧が限りあるものと実感した事はありませんでした。
マサチューセッツ州のコンコードに、ウォールデンという森があります。
ヘンリー・ディヴィッド・ソロー(1817-1862)は、森の湖畔に自力で家を建て、自給自足の生活をしながら観察、思索をした作家、思想家です。
ソローの代表作「森の生活」は、彼がウォールデンで生活した約2年2カ月の独居生活の記録で、そこには150年経った今でも色褪せないメッセージが多く刻まれています。
彼はその中で、どんなに働いて蓄えても、我々は人生に満足できないと言っています。労働に人生のほとんどを費やすのは無駄である。簡素な生活をすれば、多く働く必要もなく、人生を重荷に感じる事はないと。
つまり、私達は多くを望むから常に渇きを感じるという事。簡素な生活の中に、真の豊かさがあるという事を、力強い言葉で説いています。欲しいものが手に入らない事でストレスを感じ、疲弊させるのは自分自身であり、そもそも「足るを知る」生活であれば、どんなに混乱した世の中でさえ飄々と幸せを感じて生きていけるのでしょう。
私自身はストイックな彼の考えを尊敬し、強い共感を抱きますが、一方で究極の理想論では?・・・と全てを受容できずにいます。しかしライフスタイルの大きな見直しを迫られることになった今、一人ひとりの精神の在り様が問われているのも事実ではないでしょうか。
ソローの思想には、今の私達に必要な多くの教えが散りばめられているように感じます。
(2011.5.6 こまつ)