第141号 人間の力

私が通っていた小学校には、薪を背負って本を読む幼い二宮尊徳(二宮金次郎)の銅像がありました。
困難の中にあっても勉学に励む姿を見て、子供ながらに尊敬したものです。

しかしそれだけ懸命に勉強をした人物が、その後一体何をしたのか、詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
恥ずかしながら、私もその一人です。
しかし先日、ある一冊の本に出会い、二宮尊徳の偉業を知ることができました。

一人の孤児であった尊徳が、困難の中で勉学に励んだ少年時代。
その後、勉学によって得た信念と忍耐で荒れた土地を切り拓き、農作物を収穫し、富と名声を得るようになるのです。

誰が尊徳かわかりますか? 答えは上の一番右。 ・・・意外。

誰が尊徳かわかりますか?
答えは上の一番右。
・・・意外。

尊徳は小田原藩主に認められ、荒れた村の復興を任されるようになりました。
貧困し、退廃して賭博の巣窟となり、村人自身が泥棒で怠け者になっている廃村を再興させるのは、簡単なことではありません。

尊徳はまず「道徳力」を改革の要素として重視し、高い動機をもって働けるように村民を変えていきました。
そして根気強い意識改革の末、村人皆で荒廃した地を耕し、自然の恵みを十分に受けられる地へと変化させたのです。

「食べること=生きること」の時代。
農作物が収穫できるかどうかは、人々の生死にかかわる大問題です。
尊徳の成し得た偉業とは、荒れた土地と人々の心を耕し、それによって多くの村人の命を救ったということでした。

 

その後、時代は大きく変わりました。
スーパーに行けば清潔な棚にたくさんの食物が並んでいます。
しかし自然の脅威に常に晒されているという点では、昔と何ら変わりありません。

今年も変わらず、いつもの花が咲くことに感謝。

今年も変わらず、いつもの花が咲くことに感謝。

倒れても何度でも立ち上がる力。
根気強く困難に立ち向かい、復興する力が人間にはあるということを、尊徳は教えてくれています。
自然災害を前に肩を落とした我々の背中を、偉人が力強く叩いてくれている気がします。

(2016.4.27 こまつ)