数年前、南原清隆さんが佐渡島を旅しながら、世阿弥について熱く語るテレビ番組を見たことがきっかけで、一冊の本に出会いました。
「世阿弥最後の花」著:藤沢周
それまで世阿弥と言えば、父の観阿弥と共に歴史の教科書に出てきた人物で、日本の伝統芸能である能を作ったということぐらいしか知りませんでした。
しかしその本の中の世阿弥は老いてなお美しく、人々への優しさ、佇まいや能への情熱から、流刑された先でも老若男女を惹きつける、とても魅力的な人物でした。
さらに調べてみると、幼いころから美しい容姿であった世阿弥は、若き将軍である足利義満に寵愛され、いわゆる当時のスーパーアイドルであったことがうかがい知れます。晩年、佐渡島に島流しをされますが、自分がイメージしていた地味で小難しい印象の人物と大きく異なることに驚き、いつか本の舞台である佐渡島で能を鑑賞してみたいと思っていました。
先日、その願いが叶い、佐渡島にある神社で「薪能」(たきぎのう)を鑑賞することができました。夜、屋外にある能舞台の周囲にかがり火を焚いて上演される薪能は、とても幻想的で、演目も世阿弥が改作した「鵜飼」であり、時が経った今も受け継がれているものを鑑賞するのは感慨深いものでした。
能を最後まで通して鑑賞したのはこれが初めてですが、約1時間の上演を観ることができたのは、最初にあらすじの説明があったからだと思います。やはり言葉などは聞き取りづらく、意味も分かりにくいので、事前勉強は必要かもしれません。
息子はセリフの語尾が、全て「候(そうろう)」であることが面白かったようで、笑いをこらえていました。
この能鑑賞はシチュエーションも含めて貴重な体験となり、大切な思い出となりました。
佐渡島では、他に世界遺産に登録されたばかりの佐渡金山を巡ったり、たらい舟に乗ったり、トキを見たりしましたが、一番印象的だったのは島の最北端にある二ツ亀という景勝地でした。二つの小さな島で、フランスのモンサンミッシェルのように満潮時は離れ島となりますが、波のないときは佐渡島と陸続きになります。日本海の荒波と共に、雄大な自然を感じることができるお勧めスポットです。
この二ツ亀は夏には海水浴場になるとのこと。
次は水着を持ってもう少しのんびり旅が出来たら、と思います。
(2024.10.31 こまつ)