第214号 妄想から広がる食の世界

最近スーパーに買い物に行くと、つい探してしまうもの。

陳列棚の小さなラベルをジッと凝視しながら探しているのは「リースリング」というブドウから作られた白ワインです。

白ワインといえばシャルドネやソーヴィニヨン・ブランが代表的でよく目にしますが、リースリングはあまり見かけません。だから見つけた時はちょっと嬉しくて、お手頃な価格であれば買ってしまいます。

私は本や映画の調理や食事のシーンから影響を受けやすく、美味しそうな描写から味のイメージを膨らませたり、実際に調べながら買ったり作ったりすることもあります。

最近は「楽園のカンヴァス」(著者:原田マハ)を読んで、そこに度々登場するリースリングって何?という疑問から始まり、どうやらそれがドイツの代表的な白ワインの名前で、ブドウの品種名であることを知ったのでした。

話は、スイスを舞台に美術館のキュレーター(絵画の研究や鑑定などを行う専門職)の男女二人が、画家のルソーの名作「夢」を前に、真贋判定の対決を行うという内容です。ルソーの人物像や親交のあったピカソとの交流エピソードも織り交ぜられ、最後まで前のめりで読めた1冊でした。

冷えたリースリングはとても美味しくて、自分も物語の中にトリップ出来たかのように感じます。対決の緊張感、圧巻の絵画、舞台である重厚なお屋敷が目の前に広がっているように感じます。単純ですね。
でもそんなふうに興味が広がって新しい刺激を味わえるのは、とても楽しいです。

他には随分前の本ですが「博士の愛した数式」に出てくる豚フィレ肉のソテーと付け合わせのサラダの描写も美味しそうで、こんな感じかな?と妄想しながら何度も作りましたし、最近は韓国ドラマに出てくる色々な料理にも興味津々です。

本や映画の中の料理を、自分なりにイメージして楽しむ。
妄想から広がる新しい食の世界。
そんな切り口で物語を楽しむのも良いですね。

(2022.7.27 こまつ)