第212号 ビールが美味しくなる魔法

母の日が終わるころから、梅雨入り前までのほんのわずかな期間。
あっという間に過ぎ去るこのひとときが一年で一番好きな季節です。

私の目と鼻を悩ませた花粉の季節が終わり、重たいコートを脱いでシャツ一枚で過ごせる風薫る五月。
日中は多少暑くても、朝と夜は空気が冷たくなって、夜は白い清潔な綿の布団カバーで覆われた羽毛布団1枚を掛けて眠りにつく。
なんて幸せ!

たくさんご注文を頂く母の日を終えて、梅雨入りまでの特別な時間をゆっくりのんびり過ごしたいと毎年夢見ていますが、現実はお庭や花壇のメンテナンス作業に追われています。

気温が高くなって役目を終えた花を、夏の花に植え替える作業を、梅雨入り前に終わらせねばなりません。
軽ワゴン車の荷台と足元に花苗のトレーを積めるだけ積んで、麦わら帽子と冷たい飲み物が入った水筒2本を持って、作業着で出かけます。一度でかけたら、そのまま数件まわることも多いので、準備はかなり慎重です。

店舗やショールーム等の植栽のお手入れは店休日に行うことも多いのですが、遮るものがない屋上は5月でも真夏のように暑い日もあり、誰もいない屋上でひとり黙々と作業をしながら、「暑くてここで倒れても誰も気づいてくれない」という現実に気づき、一人で身震いする時もあります。

でも枯れてみすぼらしくなっていた花壇が、夏の鮮やかな花で彩られたのを見ると、疲れも吹き飛び、最高に爽やかな気持ちになります。赤や青のサルビアやマリーゴールド、華やかなニチニチソウ等、夏の花壇は賑やかで楽しいです。

そんな作業を無事に終えた日のビールの美味しいことと言ったら!
家の缶ビールなのに、まるで魔法にかかったよう。
素敵なレストランで頂くビールも良いけど、やっぱりこれが一番ですね。

(2022.5.31 こまつ)