第176号 金柑に見る上京物語

先日、九州に住む叔母からたくさんの金柑が届きました。
自宅の木に毎年たくさんの実がなるようで、オレンジ色の小さな粒はまるでキラキラした宝石のよう。
大量の金柑の半分を友人にお裾分けし、残りはとりあえず冷蔵庫に入れました。

でも、我が家で金柑を食べるのは私だけ。
生のまま食べるには飽きてしまうと思い、去年はジャムにしたけれど、結局それも私一人で食べたんだったっけ。

どうしたらもっと美味しく食べられるかな…と考え、スマホでレシピ検索をしたところ、「オランジェット」というワードが目に留まりました。
オランジェットとは砂糖漬けのオレンジの皮にチョコレートがかかったお菓子のこと。

これを金柑で作れるなんて!

早速レシピを見ながら金柑のオランジェットを作り始めました。

工程としては以下の通り。
①洗った金柑に、縦に5ミリ間隔で切れ込みを入れる。
②それらを熱湯で下茹でした後、一粒ずつ押しつぶして、中の種を楊枝で取り除く。
③砂糖と水で煮る。
④ざるにあげて低温のオーブンで焼き、セミドライにする。
⑤溶かしたチョコレートをからめて完成。

お分かりのように、思った以上に手間がかかるレシピ。
特に①と②は終わりが見えず、まるで精神修行のよう。途中から意地になり、ひとりキッチンで大量の金柑と向き合い、小さな種を取り出し続けたのでした。

そして、そんな苦労の末に出来上がった金柑のオランジェットのなんと愛おしいこと!田舎で育った素朴な少女がチョコレートをまとい、都会の洗練された女性に成長した・・・そんなエピソードが思い浮かぶのでした。

完成したオランジェットは大好評で、あっという間に皆のお腹に収まりました。
もう1回食べたいけれど、あの作業を思い出すと尻込みしてしまいます。金柑も人間も、洗練された女性になるって、手間暇がかかるんだな。

(2019.4.30 こまつ)

 

完成したオランジェットの一部。

節分の豆はグラノーラに。ここにも上京物語あり。