第151号 おすすめの一冊

ここのところ、夕方には仕事を終え、子供と一緒に夜9時頃には就寝してしまいます。
そのため自分がゆったり過ごす時間は必然的に早朝となりました。

最近は少しのんびり起床するようになりましたが、年末頃からしばらくの間は朝4時に起床していました。
当然外は真っ暗で、まだ星が光っている時間帯。
ひっそりとした部屋の中で温かいお茶を飲み、本を読んだり、やり残した家事や仕事を片付けることが日課となっていました。

そんな真冬の朝に読む本として、ぴったりだなぁと思ったのが井上靖の「本覚坊遺文」。
千利休の死後、弟子である本覚坊の目を通して、茶湯や利休の死の謎について綴られた作品です。

戦国末期、命懸けで戦う武士と同様に、利休も茶湯に命を懸け、一席一席が真剣勝負であったということ。
小さな茶室の中、張り詰めた空気の中で繰り広げられる茶人や武士達の茶事や問答。
それまで遊びであった茶湯を、芸術にまで高めた利休の才能。
利休を庇護していた秀吉が、なぜ切腹を命じたのか。
そして、利休はなぜ一言も秀吉に言い訳することなく、自刃することを選んだのか。

想像力を刺激され、自分がまるでその時代にいるような、茶室を隅から覗いているような気分にさせてくれる名著だと思います。
冬の朝の空気の冷たさと静けさが、この本の持つ雰囲気にぴったりで、早起きして読書をするのが楽しみになるほどでした。
文章もとても読みやすく、本を開くと同時に引き込まれます。

もうずいぶん前ですが、私も茶道を少し習っていたことがあり、この本を読んだことをきっかけに、茶道具を買いなおしました。
最近は、コーヒーの代わりにお茶を点てて楽しんでいます。

優れた暖房器具と座り心地の良いソファに腰かけて頂くお茶。
利休が見たら「堕落している」と言うでしょうね。

(2017.2.28 こまつ)

お茶のお供は適当に作ったチーズケーキ。

一保堂で茶筅と抹茶を購入しました。

苦くて美味しいです。