第146号 roughについて考える

先日のフラワーレッスンは「花束を作る」というカリキュラム。

出来上がった花束をラッピングして頂く際に「できるだけラフに、ざっくりと包みましょう」とお伝えしたら、生徒さんが一言。
「ラフっていうのが、一番難しいですよね」

自分で言っておきながら、わかりやすく説明することが困難で、生徒さんの言葉に思わず納得してしまいました。

改めて見渡してみると巷には「ラフ」という言葉が溢れかえっています。
シャツの袖はラフにまくってみよう、ラフなまとめ髪が今夏ブーム、男女のラフなお付き合い・・・そして、ラフな仕事ぶり、ラフな対応、といったマイナスな意味での使われ方も多いようです。

辞書を開いてみると、大まかなさま、形式ばらず気取らないさま、荒っぽいさま、乱暴なさま、とのこと。

そうなると花束をラフにラッピングするというのは「気取らずに大まかに包みましょう」ということになるわけですが、実際にそのように包んだら、荒っぽく乱暴な印象の花束に見えてしまう可能性も大きいのです。

つまりフラワーデザインにおけるラフとは、「緻密に丁寧に」作業をして、「ラフを演出する」というのが正しいニュアンスになりそうです。

ファッションやヘアメイクでも同じで、美しく清潔に保たれたベースに手を加え、少し崩すことでラフに見せていることがほとんどではないでしょうか。

気合を入れて細部までこだわって作られたものは、もちろん美しく人の心を動かす力がありますが、一方でざっくりと大まかにまとめられた(ように見える)ものを見ると、肩の力が抜けて親近感が湧きます。

毎日の生活に添える花は、そんなふうにリラックスした気持ちで眺められる花の方が良いですね。

(2016.9.30 こまつ)

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植物の自然の形を活かしたアレンジ。形を作り込まない「ラフさ」がポイント。

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秋の花はナチュラルに束ねるのが似合います。

丁寧に包んだ(!)「ラフな印象のラッピング」。

丁寧に包んだ(!)「ラフな印象のラッピング」。