第96号 あなたを花に例えると

今から10年ほど前、ちょうどこの業界に足を踏み入れた頃の話ですが、もし自分を花に例えるとするなら、何の花だろうという話を友人とした事があります。

カラーの花。すっと伸びた姿が美しい。

カラーの花。すっと伸びた姿が美しい。

当時の私は可憐な草花の雰囲気が大好きで、できれば「忘れな草のような人だね」と言ってほしいという願いをひそかに抱きながら、私を花に例えると何?と友人に聞いてみました。しばらく考えたあと、友人は「花っていうより木だね」と頷きながら自信満々に言い切り、私は思いがけない答えに大きなショックを受けた事を今でもよく覚えています。

友人は「白い花が咲く大きな木のイメージ。タイサンボクとか、モクレンとか。」と遠くを見つめながら話し続けました。忘れな草とタイサンボクって、いわば対極にあるものなんじゃないかと思い、理想と現実を目の前に突きつけられた私は、力なく「あぁ、そう。」と言って、その話を終えました。

カフェを飾るダリアのアレンジ。本物のようですが造花です。

カフェを飾るダリアのアレンジ。本物のようですが造花です。

植物はひとつひとつ強いパーソナリティーを持っているように思います。それぞれの品種まで知っているような植物好きな人たちでこのような話をすると、内容はさらにマニアックになり面白いです。あの人はチューリップのアンジェリケだねとか、あの人はやっぱりダリアの黒蝶じゃないか、いやいやバラのイブピアッチェだよ、とか。そして花を通して、意外と自分は人からそんな風に見られているんだと知ることが出来るのも、新しい発見になります。

すっかり爺さんになりました。(ケンタ)A

すっかり爺さんになりました。(ケンタ)

友人とその話をした時から10年経った今、私はタイサンボクもモクレンも大好きです。どっしりとした大きな木に、白い大きな花をつける姿は堂々としていて凛々しく感じられ、そんな花に例えてくれたなんて嬉しいな、と思うようになりました。そして当時「忘れな草」の雰囲気に憧れた心境も変化し、今では「白いカラー」のような人を目指したいと思うようになりました。究極にシンプルで、立ち姿の美しい人。カラーをイメージさせる生き方は簡単なことではありませんが、今の私の理想の女性像です。

(2012.2.26 こまつ)