第95号 街路樹逍遥

2012年がスタートし、近頃は凍てつくような寒い日が続いています。
車を運転しているとき、無意識に街路樹を観察しています。年末年始には、まだ僅かに残っていた落葉樹の葉はすべて落ち、木のシルエットが浮き立っていて、とてもきれい。さらに常緑樹の葉は寒さで濁った色に変わり、まるで淡いブラウンのフィルター越しに街を見ているように感じます。

 黄房水仙をトピュアリー仕立てに。春の香りいっぱい!


黄房水仙をトピュアリー仕立てに。春の香りいっぱい!

そんな中、景色に彩りを添えているのが椿の花です。一歩外に出てぐるりと見渡すと、そこかしこに椿が植えられていることに気がつくはず。周りに花がない分、艶やかな椿の花が一段と目立つようです。

椿の花は、ぽたりと地に落ちるから不吉だとか、毛虫が付きやすいから嫌いだ(確かに気絶しそうなほど多量の毛虫が付くことがあります)と言われ、庭木にしたくないという方も多いのですが、厚ぼったい花弁の独特の雰囲気は、上品でありながら妖艶さを感じます。ココ・シャネルが愛した花とも言われ、今でもシャネルのモチーフとして椿が使われていることをご存じの方も多いでしょう。

装丁も美しい椿の花。

装丁も美しい椿の花。

最近「フローラ逍遥」(澁澤龍彦著)という、植物の種類ごとに図版とエッセイが綴られているおしゃれな本を読みました。花屋になってから植物は私にとって「商品」ではありますが、尽きることのない興味の対象であることを、この本が改めて教えてくれました。

まだまだ道端に花の少ない季節なので、この冬は「フローラ逍遥」ならぬ「街路樹逍遥」を楽しんで春の訪れを待ちたいと思います。

寒い日はお鍋が恋しい。週に2回は食べてます。

寒い日はお鍋が恋しい。週に2回は食べてます。

※逍遥(しょうよう)・・・散歩。そぞろ歩き。

(2012.1.23 こまつ)