第81号 無店舗販売というスタイル

ちょっと思い切った言い方ではありますが、花屋はハサミとバケツがあれば始められる仕事だと思います。もちろん、お金をかけようと思えば際限なくかけられる訳ですが。

カラフルなウエディングブーケをお届け。@ザ・プリンスパークタワー東京

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開業当初は資金を出来る限り抑えるために「移動花屋」としてスタートし、今は移動花屋こそしておりませんが、相変わらず「店舗」はありません。スタッフも私たった一人だけ。でも私はこのスタイルがとても気に入っています。

開業してから仕事も増えて、少しずつ自信もついてきた頃は、度々「店舗を持とうか」「スタッフを雇おうか」と悩む事もありました。

でもそんな時、私の尊敬する70歳代の先輩経営者が、私の肩を叩いて言ってくれました。「君の一番素晴らしいところは、店舗を持たずに仕事をしている事だよ。それはすごい事だ。」・・・ビックリすると同時に、とても嬉しい気持ちでした。

美容院の開店祝いのアレンジメント。シックなイメージで。

美容院の開店祝いのアレンジメント。シックなイメージで。

花屋の仕事の基本は、花を仕入れて、お客様の要望に合わせて組み合わせ、販売する事。でも「花屋を経営する」という事は、店の規模の大小に関わらず、経営や会計の知識が絶対不可欠。中長期的な計画を立て、自らを管理する能力も必要で、それが容易でない事は日々実感しています。

今の身の丈で考えると、店舗を持たないこのスタイルが最も自分に適していると思います。家賃や人件費を抑え、それを商品に還元する事ができ、お客様が喜んで下さる。私自身も、生活と仕事のバランスが上手くとれ、心も体も元気でいられる。仕事を組織化し、規模を拡大することだけを目標にするのではなく、自分の手が届く範囲で、この先もずっと丁寧に仕事を続けていく。それが今の私にできる社会との関わり方だと思っています。

秋はとても綺麗な季節。

秋はとても綺麗な季節。

もしかしたらこの先に、考えや状況が変わる事もあるかもしれませんが、それでも世間一般の常識にとらわれることなく、自分の意見を持ち、それを形にできるよう日々努力していきたいと思っています。

(2010.11.26 こまつ)